【令和8年度税制改正】消費税の改正ポイントを解説|プラットフォーム課税の導入とインボイス経過措置の見直し
令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」では、消費税に関して2つの大きな改正が行われます。
1つ目は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の経過措置の延長・調整です。小規模事業者の実務負担に配慮しつつ、適用範囲を絞り込む方向で見直しが行われます。
2つ目は、国境を越えた電子商取引に対する課税の見直しです。「1万円以下の少額輸入貨物」を新たに消費税の課税対象とし、プラットフォーム事業者に納税義務を課す仕組みが中心です。
本記事では、これらの改正内容について、制度の狙いと実務への影響を解説します。
※本記事は令和8年度税制改正大綱の内容を一税理士の視点で解説したものです。 個別具体的な適用については、必ず顧問税理士や税務署にご確認ください。
1. インボイス制度の経過措置見直し
本章では、「2割特例終了後の個人事業者向け3割特例」「免税事業者からの仕入れに係る経過措置の見直し」の2点を取り上げ、インボイス制度の経過措置に関する改正内容を解説します。
1-1. 2割特例終了後の個人事業者向け措置|「3割特例」の創設
いわゆる「2割特例」の終了後も、個人事業者について、納付税額を「売上に係る消費税額の3割」にできる措置が、2年間に限り講じられます。
| 適用対象 | 個人事業者(これまで2割特例の対象だった事業者含む) |
|---|---|
| 適用期間 | 令和9年分・令和10年分 |
| 納税額の計算 | 売上に係る消費税額 × 30% |
■制度の狙い
個人の小規模な適格請求書発行事業者について、急な負担増をなだらかにすることが目的です。
■簡易課税への移行もスムーズに
この措置を使用した翌課税期間から簡易課税制度へ移行しやすくする手当も設けられています。確定申告期限までに届出書を提出すれば、翌課税期間から簡易課税の適用が認められます。
実務上のチェックポイント
- 申告書への付記
- 簡易課税へ切り替える場合の届出期限
1-2. 免税事業者からの仕入れに係る経過措置の延長と引き締め
免税事業者等からの課税仕入れについて、控除可能割合のスケジュールが見直され、最終期限が2年延長されます。
新しい控除割合のスケジュール
| 期間 | 控除可能割合 |
|---|---|
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
適用上限の引き下げ|年1億円超は適用除外
一方で、適用上限は引き締められます。
重要な変更点
特定の「適格請求書発行事業者以外の者」からの仕入れ合計が年(又は事業年度)で1億円を超える場合、超過部分は経過措置の適用が認められません。
(現行:10億円 → 1億円に引下げ)
この変更により、大口取引ほど、免税事業者との取引継続にコストがかかる構造となります。B2Bの購買側にとっては、取引先の見直しの必要が出てくる可能性があります。
2. 国境を越えた電子商取引の課税見直し
本章では、「1万円以下の少額輸入貨物の課税対象化」「プラットフォーム課税の仕組み」「仕入税額控除の取扱い」「特定少額資産販売事業者の登録制度」の4点を取り上げ、国境を越えた電子商取引に関する課税見直しの全体像を解説します。
2-1. 1万円以下の少額輸入貨物を「消費税の課税対象」に
国外から国内向けに通信販売で発送される資産のうち、税抜き1万円以下のもの(「特定少額資産の譲渡(仮称)」)が、消費税の課税対象となります。
改正の背景
越境ECの拡大により、少額輸入貨物が増加しています。こうした少額貨物を課税対象に加えることで、国内事業者との課税上の不均衡を是正するのが今回の改正の狙いです。
ポイントは「誰が納税するのか」です。その仕組みが、次に解説する「プラットフォーム課税」です。
2-2. 「プラットフォーム課税」の導入|納税義務の転換
デジタルプラットフォームを介した一定の物品販売について、売り手(出品者)ではなくプラットフォーム事業者が納税義務を負う制度が導入されます。対象となるプラットフォーム事業者は「第2種プラットフォーム事業者」として指定されます。
対象となる取引
プラットフォーム課税の対象は、以下の2つです。
- 国外事業者の国内販売(特定少額資産の譲渡を除く)
- 事業者が行う特定少額資産の譲渡
いずれも、プラットフォームが代金を収受する取引が対象です。
第2種プラットフォーム事業者の指定要件
該当取引の対価合計が課税期間で50億円(税込)を超えると、届出義務が発生し「第2種プラットフォーム事業者」に指定されます。
プラットフォーム事業者に該当する可能性がある場合は、この「50億円超・届出・指定」の流れを押さえておくことが重要です。
2-3. プラットフォーム側の仕入税額控除
第2種プラットフォーム事業者は、国外事業者の承諾を得ることで、その国外事業者が行った課税仕入れ(保税地域からの引取りを含む)のうち、プラットフォーム課税の対象取引に対応する部分について仕入税額控除を適用できます。
つまり、納税義務を負うプラットフォーム側が、対応する仕入税額控除も受けられる設計となっています。
2-4. 「特定少額資産販売事業者」登録制度の創設
免税事業者を除く1万円以下の少額輸入品を販売する事業者は、申請により「特定少額資産販売事業者」として登録できる制度が設けられます。
登録の要件と注意点
- 登録の要件
国外事業者が登録する場合、消費税の税務代理人を選任していること等が要件となります - 登録の注意点
登録日の翌課税期間以後は、取消届出がない限り免税点制度が適用されません。また、発送書類への記載や輸入者への通知義務など、実務上のオペレーション変更が発生する点にも留意しておきましょう。
3. その他の消費税関連の改正
消費税の不正対策・適用範囲の明確化として、以下の改正も行われます。
盗難特定金属製物品の処分防止法関連
盗難特定金属製物品の処分防止法の施行に連動し、仕入れ関係の取扱いが見直されます(同法施行日から3か月経過の翌日以後の課税仕入れに適用)。
貸倒れの範囲の拡大
貸倒れの範囲に「権利変更決議に基づく債権切捨て」が追加され、円滑な事業再生局面での取扱いが明確化されます。
輸出免税の見直し
- 現金等で代金受領した輸出取引について、輸出免税の証明書類に輸入国側の輸入許可書等(電磁的記録を含む)を追加保存する要件が設けられます
- 非居住者向けの国内不動産役務が輸出免税の対象外となります
4. 施行時期の整理
今回の改正は、項目によって施行時期が異なります。実務対応のスケジュールを立てる際にご確認ください。
| 施行時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年10月1日 | ・免税事業者からの仕入れに係る控除割合の新スケジュール開始 ・年1億円超部分の適用除外開始 ・輸出免税の証明書類追加・非居住者向け国内不動産役務の輸出免税除外 |
| 令和9年分・令和10年分 | 個人事業者の「3割特例」適用期間 |
| 令和9年4月1日 | プラットフォーム指定手続等の経過措置適用開始(判定は令和9年1月〜3月の実績を年換算) |
| 令和9年10月1日 | 特定少額資産販売事業者の登録申請受付開始 |
| 令和10年4月1日以後 | 国境を越えた電子商取引の課税見直し(特定少額資産、物品販売のプラットフォーム課税等)の本格適用 |
まとめ
本記事では、令和8年度税制改正における消費税の改正ポイントについて解説しました。
- インボイス制度の経過措置見直し
- 2割特例終了後の個人事業者向け「3割特例」(令和9・10年分)
- 免税事業者からの仕入れ経過措置の延長(70%→50%→30%)
- 適用上限を10億円から1億円に引下げ
- 国境を越えた電子商取引の課税見直し
- 1万円以下の少額輸入貨物が消費税の課税対象に
- プラットフォーム課税の導入(50億円超で指定対象)
- 特定少額資産販売事業者の登録制度創設
特に、プラットフォーム課税は令和10年4月1日から本格適用となりますが、指定手続は令和9年4月1日から始まります。また、インボイス経過措置の上限引下げは令和8年10月1日から適用されるため、早めの対応・検討が必要です。
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