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freee法人成り|認定アドバイザー税理士が解説する税務6論点と仕訳

2026.05.04

はじめに

個人事業でfreeeを使っていれば、法人成り後の日々の入力は同じやり方でほぼ問題ありません。freeeはインボイス対応も自動仕訳も優秀で、運用面は今までどおり回ります。

法人成り時の引継ぎも、freee法人プランの 「開始残高」機能 で期首時点の資産・負債を一括登録できる設計になっています。ただし実際には、この開始残高に何を入力すべきか分からない、あるいは誤った入力をしてしまう経営者が多い のが現実です。freeeの操作で詰まっているのではなく、その背後にある 税務上の論点が認識されていないこと が原因です。

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例えば廃業年の消費税は、みなし譲渡や事業用資産の譲渡を含めると通常年より大きく膨らむことがありますし、個人事業税は廃業年の決算で見積計上しないと、翌年に届く納付書の金額が経費にならない事態になります。freee認定アドバイザーとして多くの法人成り案件に関わってきた立場から見ても、これらは freee の自動仕訳では検知されないため、ユーザー自身(または税理士)が論点として認識し、開始残高や決算整理仕訳に正しく反映させる必要があります。

本記事では、freeeで個人事業をやっている経営者が法人成りするときに、freee運用だけでは取りこぼしやすい6つの税務論点を整理します。

法人成りで発生する税務論点マップ

法人成りに伴うfreee上の作業は、大きく 「個人freeeの最終決算」「法人freeeの開始残高登録」 の2つに分かれます。各論点がどちら側のマターになるかを整理すると、次のとおりです。

論点個人側マター法人側マター
① 消費税◎(最終決算で課税売上認識)△(インボイス登録判断)
② 廃業年の租税公課×
③ 固定資産○(除却・譲渡)◎(開始残高登録)
④ 開業費・創立費×
⑤ 棚卸資産○(売上計上)◎(開始残高登録)
⑥ 売掛金・買掛金

論点①:消費税のみなし譲渡と事業引継ぎ

法人成りで最もインパクトが大きい論点が消費税です。個人が課税事業者だったか免税事業者だったか で処理が大きく変わります。

個人が課税事業者だった場合

個人事業の事業用資産を法人で使う場合、税務上は 個人から法人への譲渡取引 とみなされ、消費税の課税対象になります。譲渡価額は原則として時価です。

さらに、廃業時点で法人に譲渡せず個人で使い続ける事業用資産がある場合、「みなし譲渡」として時価で課税売上を計上する必要があります(消費税法第4条第5項)。「処分しなかった」「家事用に転用した」資産も廃業時点で時価評価し、最終課税期間の課税売上に計上します。

これらは個人事業の通常運営では発生しない仕訳です。廃業年の消費税額は通常より大きくなりがちなので、納税資金の準備も含めて事前にシミュレーションしておくべきです。

【個人側仕訳例:簿価100万円のPCを時価120万円で法人に譲渡】

借方金額貸方金額
事業主貸1,200,000工具器具備品1,000,000
事業主借(譲渡益)200,000

※消費税の課税売上認識(120万円)はfreeeの課税区分設定で別途行う

個人が免税事業者だった場合

個人側での消費税課税はありません。ただし法人設立後、適格請求書発行事業者として活動する場合は、法人として別途インボイス登録が必要 です。個人時代のインボイス登録番号を法人で使うことはできません。

freeeでの注意点

  • 法人への資産譲渡を入力するとき、課税区分を「課税売上」に正しく設定する
  • みなし譲渡分はfreeeが自動で仕訳提案しないため、決算整理仕訳として手動で入れる
  • 譲渡対象資産の時価算定は別途必要(中古市場価格、簿価近似値等)

譲渡資産の時価算定や、課税事業者だった場合の課税売上認識は、freeeの自動処理ではカバーされない手作業の部分です。判断に迷うものがあれば、最終確定申告を提出する前に税理士確認を受けておくと、廃業年の納税額の見通しも立ちやすくなります。

論点②:廃業年の個人事業税・消費税の計上

廃業年に支払いが翌年になる租税公課は、最終確定申告で経費に落とすための処理が必要 です。これを忘れると、翌年支払う税金がどこの経費にもならない最悪のパターンになります。

個人事業税:見積計上

個人事業税は賦課課税方式のため、翌年に都道府県から納付書が届きます。廃業した場合、所得税法第63条により、見込額を最終年の必要経費に算入できます。

計算式

(事業所得 − 290万円(事業主控除)) × 業種別税率

業種別税率の主な区分:

区分税率主な業種
第1種事業(37業種)5%物品販売業、製造業、飲食店業、不動産貸付業など
第2種事業(3業種)4%畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業(大半)5%医業、税理士業、デザイン業、コンサルタント業など
第3種事業(一部)3%あんま・マッサージ・はり・きゅう、装蹄師業

仕訳例(事業所得500万円、第1種事業の場合)

(500万 − 290万)× 5% = 105,000円

借方金額貸方金額
租税公課105,000未払事業税105,000

消費税:未払計上

消費税は申告納税方式なので、決算時に確定額を算出できます。経理方式で処理が異なります。

税抜経理の場合

通常の決算整理と同様に、仮受消費税と仮払消費税の差額を未払消費税等に振り替えます。特別な処理は不要です。

税込経理の場合

決算整理仕訳として未払消費税等を計上します。

借方金額貸方金額
租税公課200,000未払消費税等200,000

freeeで税込経理を選択している場合、消費税の自動計算結果は出ますが、未払計上の決算仕訳は手動で入れる必要があります。ここを見落とすと、翌年に支払う消費税が個人の経費にも法人の経費にもならない事態になります。論点①のみなし譲渡の影響で廃業年の消費税額は膨らみがちなため、計上漏れのインパクトも大きくなります。freee認定アドバイザーとして数多くの廃業年処理を見てきましたが、税込経理ユーザーではこの計上漏れがしばしば発生します。

計上漏れの場合

最終確定申告で計上漏れがあった場合、法定申告期限から5年以内であれば更正の請求で修正可能です。ただし時間も手間もかかるため、最終確定申告の段階で確実に処理することを強く推奨します。

個人事業税・消費税の見積額を計算するには、廃業時点の課税所得とみなし譲渡を含む課税売上を確定させる必要があり、論点①と連動します。両方をまとめて税理士に整理してもらうのが現実的です。

>> 個人事業の最終決算でつまずきそうな方へ

ここまでで、個人freee側で押さえるべき論点(①②)を整理しました。みなし譲渡の時価判定や、廃業年の租税公課の見積計上は、freeeの自動処理ではカバーされない領域です。

こうした論点は、最終確定申告を提出した後で間違いに気づくと、更正の請求の手続きで時間も手間もかかります。法人化を決めた段階で税理士に相談するのが、結果的にもっとも効率的 です。当事務所では顧問契約の中で、最終確定申告の処理から法人1期目決算までを一貫してサポートしています。

サービス内容を見る

論点③:固定資産の引継ぎと耐用年数の再計算

個人事業で使っていた減価償却中のPC・車両・備品等を法人で使う場合、個人から法人への譲渡取引 として処理し、法人側では開始残高に登録します。

譲渡価額の決定

税務上の原則は時価譲渡です。簿価と時価が大きく乖離している場合は、簿価譲渡だと税務上の問題が生じます。

  • 含み益がある資産(時価>簿価):簿価譲渡は低額譲渡リスク。個人で時価との差額が「みなし譲渡所得」として課税される可能性
  • 含み損がある資産(時価<簿価):簿価譲渡は高額譲渡となり、法人側で資産過大計上のリスク

実務的には簿価がそのまま時価とみなせるケースも多いですが、判断に迷う場合は税理士確認を推奨します。

仕訳例

PCを簿価200,000円で個人から法人に譲渡したケース。

【個人側】

借方金額貸方金額
事業主貸200,000工具器具備品200,000

【法人側(開始残高)】

借方金額貸方金額
工具器具備品200,000役員借入金200,000

中古資産の耐用年数の再計算

法人側で資産を引き継ぐ際、耐用年数は中古資産として再計算します。

  • 法定耐用年数を全部経過:法定耐用年数 × 20%
  • 法定耐用年数の一部を経過:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
  • 1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満の場合は2年

freeeでの注意点

  • 個人freeeの固定資産台帳から該当資産を「除却」または「譲渡」処理する
  • 法人freeeの 開始残高設定 で工具器具備品等として登録、合わせて 固定資産台帳にも新規登録 する(取得日は譲渡日、耐用年数は中古資産ルールで再計算)
  • 開始残高だけ入れて固定資産台帳に登録し忘れると、減価償却の自動計算が走らない

含み益・含み損のある資産が混在している場合や、減価償却中の資産が多い場合は、時価判定と耐用年数の再計算で判断が複雑になります。法人freeeの開始残高に登録する前にリストアップして、税理士確認を受けるとミスを防げます。

論点④:開業費・創立費の処理

法人設立に伴って発生する費用は、設立登記日の前後で扱いが異なります。

  • 創立費:設立登記日までに発生した費用(定款認証費用、登記費用、設立企画者への報酬等)
  • 開業費:設立登記日後、営業開始日までに発生した費用(開業準備のための広告宣伝費、調査費等)

両者とも繰延資産として計上し、法人税法上は 任意償却 が認められています(5年以内の均等償却または任意の年に一括償却)。

仕訳例

設立登記費用15万円を代表者個人が立替払いしたケース:

【法人側(開始残高)】

借方金額貸方金額
創立費150,000役員借入金150,000

個人事業の経費との線引き

個人事業を営みながら法人設立を進めていた場合、設立日前の事業活動に関する費用は基本的に個人の経費 です。法人の創立費・開業費に組み入れられるのは、あくまで「法人を設立するための費用」または「設立後に開業準備のために発生した費用」に限定されます。

例えば、設立日前に発生した家賃・通信費・仕入等は個人の事業所得の経費であり、法人の開業費にはできません。

freeeでの注意点

  • 法人freeeの 開始残高設定 で繰延資産(創立費・開業費)として登録する
  • 償却方法は任意償却を選択できるため、初年度の損益計画に合わせて償却額を調整する

個人事業の経費として処理すべきか、法人の創立費・開業費として処理すべきかの線引きはケースバイケースです。設立準備期に発生した費用がリスト化できているなら、税理士に振り分け判断を相談すると、初年度の損益計画も立てやすくなります。

論点⑤:棚卸資産の引継ぎ(70%基準)

物販系・飲食系の事業の場合、廃業時点での棚卸資産(在庫)を法人に引き継ぐかどうかの判断が必要です。

譲渡価額の判断

棚卸資産の個人→法人譲渡は、税務上 「通常販売価額のおおむね70%以上」 の価額で譲渡することが必要です(所得税基本通達40-2の趣旨)。仕入価額そのままで譲渡すると低額譲渡として扱われ、個人の所得計算が修正される可能性があります。

仕訳例

仕入価額50万円・通常販売価額100万円の棚卸資産を、譲渡価額70万円で法人に譲渡したケース。

【個人側】

借方金額貸方金額
事業主貸700,000売上高(課税売上)700,000

【法人側(開始残高)】

借方金額貸方金額
商品(または仕入高)700,000役員借入金700,000

個人が課税事業者の場合、この譲渡は消費税の課税対象です(論点①参照)。

freeeでの注意点

  • 個人の在庫管理機能を使っている場合、廃業時点で棚卸を行い譲渡数量・価額を確定させる
  • 法人freeeの 開始残高設定 で「商品」として登録する
  • 過去の仕入価額を引き継ぐわけではなく、譲渡価額が法人の取得価額になる

70%基準の譲渡価額判定や、消費税の課税売上認識(論点①参照)など、複数の論点が交差する領域です。物販・飲食系で在庫が多い事業ほど影響が大きいため、棚卸時点で税理士に整理を依頼するとミスを防げます。

論点⑥:売掛金・買掛金の最終処理

廃業時点で残っている売掛金・買掛金の扱いは2パターンあります。

パターンA:個人で完結させる(推奨)

個人の口座で売掛金を回収し、買掛金を支払う。最終確定申告までに処理を完了させる。実務的にはこちらがシンプルです。法人freeeの開始残高にも反映する必要がありません。

パターンB:法人に引き継ぐ

法人で代理回収・代理支払いを行う場合、個人と法人の間の貸借として処理し、法人freeeの開始残高に登録します。

【法人側 入力例(開始残高)】

借方金額貸方金額
売掛金(個人事業引継ぎ分)200,000役員借入金200,000

回収時:

借方金額貸方金額
普通預金200,000売掛金(個人事業引継ぎ分)200,000

freeeでの注意点

  • パターンBで法人口座に個人の売掛金が入金された場合、自動で経理で「売上高」として認識(提案)される可能性が高く、個人と法人での二重登録の原因となりやすい
  • 入金時に勘定科目を必ず「開始残高で登録した売掛金」または「役員借入金」に修正する
  • 確認漏れで売上計上したまま決算を迎えると、法人の売上が過大になり、個人の事業所得が過小になる二重のズレが発生する

パターンBで法人に引き継ぐ場合、自動仕訳の修正漏れが法人決算と個人最終確定申告の整合性を崩します。freee認定アドバイザーの立場で言うと、自動仕訳の修正漏れは法人1期目決算で頻繁に見つかるミスのひとつですので個人的にはパターンAを強く推奨します。開始残高の登録後に一度レビューを入れて、自動仕訳の挙動も含めてチェックしておくと安全です。

freeeでの実装まとめ

論点ごとに、freee上のどの機能で処理するかを整理します。

論点個人freeeでの対応法人freeeでの対応
① 消費税(譲渡・みなし譲渡)決算整理仕訳で課税売上を計上該当なし(インボイス登録は別途判断)
② 廃業年の租税公課決算整理仕訳で未払計上該当なし
③ 固定資産固定資産台帳から除却・譲渡処理開始残高+固定資産台帳に新規登録(中古資産耐用年数で再計算)
④ 開業費・創立費該当なし開始残高で繰延資産として計上、任意償却
⑤ 棚卸資産棚卸 → 譲渡仕訳開始残高で商品として計上
⑥ 売掛金・買掛金個人で回収・支払いが原則パターンBの場合、開始残高で売掛金・買掛金を登録

まとめ

freeeで個人事業をやれている経営者でも、法人成りの税務処理は別物です。本記事で扱った6論点のうち、特に 論点①(消費税)と論点②(廃業年の租税公課) は、freeeの自動処理に頼っているだけだと取りこぼしやすい領域です。また 論点③〜⑥ は、法人freeeの開始残高機能を正しく使いこなせるかが決算の精度を左右します。

法人成りのタイミング設計(消費税・社会保険・freee運用コストの観点でいつ法人化すべきか)については、別記事で改めて解説します。

ご自身の法人成りで「これは判断に迷う」と感じた論点が一つでもあれば、自分で処理する前に税理士に相談する価値があります。当事務所はfreee認定アドバイザーとして、事業引継ぎから法人1期目決算までを顧問契約の中で一貫してサポートしています。完全オンライン対応のため全国どこからでもご利用いただけます。LINE・Googleドライブ等のWebツールでスピーディーにやり取りできる環境を整えています。

ご状況に応じて、以下のサービスをご利用いただけます:

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この記事を書いた人

木下 恵一(公認会計士・税理士)

木下公認会計士税理士事務所 代表。KPMG(BIG4監査法人)出身。freee認定アドバイザーとして、法人成り・freee導入・1期目決算までを一貫サポート。完全オンライン対応のため、全国どこからでもご相談いただけます。

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