法人成り時の役員報酬を高く設定しすぎるとどうなる?変更できる?
法人成りをすると、最初に決める大きな数字が「役員報酬」です。
「これくらいもらっても問題ないだろう」
「利益も出そうだから少し高めでも大丈夫だろう」
そう考えて役員報酬を設定するケースは少なくありません。
しかし、役員報酬を高く設定しすぎると、業績や資金繰りが悪化するなど、問題となることがあります。
役員報酬は単なる“自分の給与”ではありません。
会社の固定費を決める重要な経営判断です。
この記事では、役員報酬を高く設定しすぎた場合に起こり得る問題と、変更できるのかどうか、そして適切な考え方について解説します。
役員報酬を高く設定すると何が問題になるのか
まず、前提として理解する必要があるのは、役員報酬は、一度決定すると原則として事業年度中は変更できません。
これは「定期同額給与」のルールによるものです。
つまり、毎月必ず支払う固定費になります。
売上が想定より伸びなかった場合でも、簡単には減額できません。
役員報酬を過度に高く設定すると、
- そもそも、赤字となってしまう。
- 法人毎月の資金流出が増える
- 社会保険料の負担も増える(社会保険料負担は法人及び個人で概ね15%ずつ、合計30%ほど負担する。ただし、上限あり。)
といった影響が出てきます。赤字となった場合には、当然決算書の見栄えが悪くなりますので銀行融資などを検討されている方は注意が必要です。一方で、その年度の税負担は軽くなりますし、その後の所得と相殺できます(繰越欠損金の利用)。ですが、継続的に赤字が続くと、せっかく所得と相殺できるはずだった繰越欠損金が期限切れとなってもったいない!というリスクもあります。
また、法人の資金が不足し、役員報酬が支払えなかったり、他の経費も社長が法人の代わりに立て替えることとなり、「役員借入金」が積みあがっていってしまいます。
役員借入金が増えるとどんな問題があるか?
役員借入金があること自体は特に違法ではなく、法人成りしたての会社ではよくあることです。ただ、役員借入金が多額となると、例えば次のような影響があります。
- 金融機関から資金繰りに不安があると判断される可能性がある
- 税務調査において、売上の除外を疑われるリスクがある
- 社長の相続人の相続財産となり、相続税負担が増えるリスクがある
これらのリスクは直ちに顕在化しやすいものではないですが、解消されるに越したことはないというのはご理解いただけるかと思います。特に相続財産の問題は金額が多額だと相当なリスクがあります。法人に弁済能力があれば話は別ですが、そうでない場合、相続人からすれば回収できない貸付金を相続したうえで相続税だけを払うなんて辛すぎますよね。
役員報酬はあとから変更できるのか?
では、「やっぱり高すぎた」と思っても、原則として事業年度中の減額はできません。
定期同額給与の要件を満たさない減額は、その減額部分が損金不算入となる可能性があります。
つまり、
- 高く設定
- 売上が想定より伸びない
- 減額できない
- 資金繰りが苦しくなる
という流れが起こり得ます。
役員報酬は「あとで調整する前提」で決める数字ではありません。
役員報酬を決めるときの考え方
役員報酬は、
「自分がいくら欲しいか」ではなく、
- 売上規模
- 利益見込み
- 社会保険料の負担
- 設備投資の予定
- 会社に残す資金
を総合的に見て設計するものです。
役員報酬は節税のためのテクニックではなく、法人全体の設計です。
よくある質問
Q. 役員報酬を高く設定すると法人税は減りますか?
もちろん利益が減りますので法人税は減るでしょう。しかし、その代わりに社会保険料や個人の所得税も増えますので留意が必要です。
Q. 役員報酬は期中で変更できますか?
原則としてできません。定期同額給与のルールを満たさない変更は、税務上不利になる可能性があります。
Q. 役員報酬はいくらが適正ですか?
一律の正解はありません。売上規模や資金繰りを踏まえ、固定費として耐えられる水準で決める必要があります。