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インボイス登録していない事業者から消費税を請求されたら?支払う必要はある?

2026.03.06

インボイス制度開始後、

「インボイス登録していない事業者から消費税を請求された」

という相談が増えています。

この場合、

  • 消費税は支払う必要があるのか
  • 拒否できるのか

という疑問を持つ方も多いと思います。

結論から言うと、

インボイス登録していない事業者でも消費税相当額として請求すること自体は可能です。

でも何だか納得できない!と思いますよね。税理士の私でも思います(笑)

この記事では、インボイス未登録事業者から消費税を請求された場合の考え方を整理します。


インボイス登録していなくても消費税は請求できる

まず前提として、

インボイス登録していない事業者(=適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者)でも、消費税相当額を請求すること自体は問題ありません。

なぜなら「インボイス登録していない事業者は消費税相当額を請求してはいけない」という法律やルールがないからです!

そのため、インボイス未登録の事業者でも「税込価格」として請求することは可能です。


ただし仕入税額控除は原則としてできない

問題になるのはここです。

インボイス登録していない事業者からの請求書では、

原則として仕入税額控除(=支払った消費税を、自社が納める消費税から差し引く仕組み)ができません。

つまり、買手(支払う側)からすると、その取引に含まれる消費税を控除することができないため、

実質的にコストが増える

ことになります。


では消費税の支払いを拒否できるのか?

ここは誤解が多い部分です。結論として、

一方的に消費税の支払いを拒否できるとは限りません。

なぜなら、取引価格は基本的に当事者間の契約で決まるものだからです。

例えば、

  • 契約で税込価格が決まっている
  • 見積書に税込金額が記載されている

場合は、その金額を支払う必要があります。


実務では価格交渉になることが多い

インボイス制度の影響で、次のような交渉が行われることがあります。

例えば、

  • 消費税分の値下げを求める
  • 税込価格を見直す
  • インボイス登録を依頼する

などです。

これは法律の問題というより、取引条件の問題になります。ただし、買手側が免税事業者に対して消費税相当額の値下げを一方的に求めたり、応じなければ取引を打ち切ると通告したりすることは、独占禁止法・下請法上問題となるおそれがあります。価格の見直しは双方の協議で行うのが原則です。


免税事業者が消費税を受け取るのは問題?

これもよくある疑問です。

免税事業者であっても、

消費税相当額を含めて請求すること自体は違法ではありません。

ただし、免税事業者は消費税の納税義務がないため、結果として

「消費税分が利益になる」という構造になります(いわゆる「益税」)。ただし、免税事業者も仕入や経費の段階で消費税を負担しているため、受け取った額がそのまま全額利益になるわけではありません。

インボイス制度では、この点が議論になりました。


インボイス制度で変わったポイント

インボイス制度の導入により、次のような影響が出ています。

  • 免税事業者との取引で仕入税額控除ができない
  • 取引条件の見直しが発生する
  • インボイス登録を求めるケースが増える

こうした取引では、相手がインボイス登録事業者かどうかで仕入税額控除や経過措置の扱いが変わるため、会計ソフト側で消費税区分を正しく設定しておくことが大切です。freeeでのインボイス対応や消費税区分の初期設定については、freeeのおすすめ初期設定の記事で解説しています。

そのため、取引先によっては

「インボイス登録していること」が取引条件

になることもあります。


【重要】未登録のままだと、取引上の不利が年々大きくなります

ここからが、これからを考えるうえでいちばん大事なところです。

前述のとおり、インボイス未登録の事業者から仕入れた買い手(支払う側)は、原則として仕入税額控除ができません。ただし当面は経過措置があり、未登録の相手からの仕入れでも一定割合だけは控除できます。問題は、この控除できる割合が年々段階的に縮小していくことです。。。

期間未登録の相手からの仕入れで控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日
(2023/10/1〜2026/9/30)
80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日
(2026/10/1〜2028/9/30)
70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日
(2028/10/1〜2030/9/30)
50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日
(2030/10/1〜2031/9/30)
30%
令和13年10月1日以降
(2031/10/1〜)
0%(控除できない)
免税事業者など(インボイス未登録の相手)からの課税仕入れに係る経過措置。令和8年度税制改正で2年延長・緩和されています。

つまり買い手からすると、未登録の相手に支払った消費税分のうち「控除できない部分(=実質コスト)」が年々増えていくということです。控除できる割合が80%→70%→50%…と下がるほど、買い手の負担は重くなります。

そうなると当然、買い手の側から「消費税分を見直してほしい」「インボイス登録してほしい」という抵抗や交渉の声は、年を追うごとに強まる方向になります。未登録のままでいることが、取引上だんだん不利になっていく。。。というのが、これからの大きな流れです。

なお、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一の未登録の相手からの課税仕入れ(税込)が1年(事業年度)で1億円を超えると、その超えた部分には経過措置が使えなくなる、という見直しも入っています。規模の大きな取引ほど、早めに整理しておきたいところです。


法人は「3割特例」が使えません(売り手側の注意)

ここまでは買い手(払う側)の話でしたが、自社がインボイス登録に踏み切る側(売り手側)になったときの話も、あわせて押さえておきましょう。

免税事業者からインボイス登録して新たに課税事業者になった方の納税負担をやわらげる制度として、2割特例(=売上にかかる消費税の2割だけを納めればよい仕組み)があります。これは個人事業主・法人のどちらも対象ですが、令和8年9月30日の属する課税期間まで(=2026年9月で終了)の期限つきです。

2割特例の後継として3割特例(=売上にかかる消費税の3割を納める仕組み)が用意されていますが、こちらは個人事業主のみが対象(令和9年分・令和10年分)で、法人は対象外です。ここは法人にとってけっこう大事なポイントです。。。

つまり法人の場合、2割特例が2026年9月で終わったあとは、3割特例には移れず、「本則課税(=実際に支払った消費税で計算する原則的な方法)」か「簡易課税(=みなし仕入率で計算する方法)」かを選ぶことになります(ただし簡易課税を選べるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの要件を満たす場合に限られます)。


本則課税か簡易課税か。仕入先の登録状況も絡めて選ぶ時代に

ここからは再び、自社が「仕入れる側(買い手)」に戻ったときのお話です。本則課税と簡易課税では、自社の仕入先に未登録の事業者がいるときの影響が大きく変わります。

  • 本則課税:実際に支払った消費税で控除額を計算するため、未登録の仕入先からの仕入れは、原則として前述の経過措置の割合(80→70→50→30→0%)しか控除できません(税込1万円未満の少額特例など一定の例外はあります)。控除率の低下と相まって、「仕入先にインボイス登録してもらえないと困る」度合いが、今まで以上に増します。
  • 簡易課税:みなし仕入率で控除額を計算するため、仕入先がインボイス登録しているかどうかは自社の納税額に影響しません。つまり「未登録の仕入れ問題」は、簡易課税ならそもそも関係ないのです。

そのため、特に簡易課税を選べる規模(基準期間の課税売上高5,000万円以下など)の法人では、「本則課税と簡易課税のどちらが得か」を、自社の売上・仕入の中身に加えて“仕入先の登録状況”まで絡めて検討する必要性が高まっています。仕入先に未登録の方が多いなら、本則課税では控除できない部分がじわじわ効いてきますし、逆に簡易課税ならその影響を受けません。ここは一度きちんと試算してみる価値があります。

どちらが有利になるかはお客様ごとに変わりますので、判断の考え方は簡易課税と原則課税はどっちが得?税理士が選び方を解説でくわしく整理しています。あわせてご覧ください。


よくある質問

Q. インボイスがないのに消費税を請求されたら払わなくていい?

必ずしもそうとは言えません。
契約や取引条件によって判断されます。


Q. 免税事業者が消費税を取るのは違法?

違法ではありません。
税込価格として請求することは可能です。


Q. 仕入税額控除は絶対にできない?

原則できません。ただし経過措置があり、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日からは70%を控除できます(その後段階的に縮小し、2031年9月末で終了予定)。くわしくは消費税の改正ポイントをご覧ください。


まとめ

インボイス未登録事業者から消費税を請求された場合、

  • 請求自体は違法ではない
  • ただし仕入税額控除は原則できない
  • 支払い義務は契約内容による

という整理になります。

インボイス制度は税務の問題ですが、実際には

取引条件や価格交渉の問題

として現れることが多い制度です。

とはいえ、ここで立ち止まってほしいのが「このまま未登録(または現状のまま)でいると、取引上の不利が年々大きくなる」という流れです。買い手が未登録の相手から控除できる割合は80→70→50→30%と段階的に縮小し、最後は0%になります。そのぶん、登録要請や値下げ交渉の圧力は強まっていきます。

特に法人は3割特例の対象外なので、2割特例が2026年9月で終わったあとは「本則課税か簡易課税か」の選択になります。本則課税を選ぶなら、未登録の仕入先がいると控除できない部分が効いてくるため、仕入先の登録状況がこれまで以上に重要になります。一方で簡易課税なら、その影響は受けません。

つまりこれからは、「(売り手として)自社が登録すべきか」「(買い手として)未登録の仕入先がいる前提で本則課税と簡易課税のどちらが有利か」を、仕入先の状況も含めて早めに試算しておくことが、ムダな税負担を避けるカギになります。有利選択の考え方は簡易課税と原則課税はどっちが得?税理士が選び方を解説でくわしく整理しています。

「自社の場合はどっちが得なの?」「仕入先に未登録の人がいて不安。。。」という法人のお客様は、ぜひ一度当事務所の無料相談でご相談ください。freeeでの消費税区分の設定とあわせて、状況に合わせた試算をお手伝いします。

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