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法人成りの届出一覧|会社側・個人側の手続きと期限を税理士が解説

2026.08.10

法人成り(=個人事業主が会社を設立して、事業を法人に引き継ぐこと)、おめでとうございます。登記が完了してひと安心。。。と言いたいところですが、実は会社を作って終わりではなく、ここからが届出のスタートです。

しかも法人成りの届出は、新しく作った「会社側」だけでは終わりません。個人事業を締めくくる「個人側」の手続きもセットで必要です。そして、この個人側を放置してしまうケースが本当に多いんです。

この記事では、法人成り後に必要な届出を「会社側」と「個人側」に分けて、提出先・書類名・期限の一覧表つきで税理士が解説します。最後に保存版のチェックリストも付けていますので、ぜひご活用ください。

まずは全体像|法人成りの届出は「会社側」と「個人側」の2本立て

法人成り後の届出の全体マップがこちらです。提出先は主に4か所。税務署だけでなく、都道府県・市区町村、年金事務所、そして従業員を雇う場合は労働基準監督署・ハローワークにも届出が必要です。

法人成り後の届出 全体マップ 届出は「会社側」と「個人側」の2本立てです 提出先 会社側の届出(新しい法人) 個人側の手続き(個人事業の廃止) 税務署 都道府県・ 市区町村 年金事務所 労働基準監督署・ ハローワーク (※従業員を雇う場合) 法人設立届出書(設立から2か月以内) 青色申告の承認申請書(遅くとも3か月以内) ★出し忘れると1期目の赤字を繰り越せません 給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内) 源泉所得税の納期の特例の申請書(早めに) 法人設立の届出(東京都は15日以内) ※東京23区は都税事務所のみでOK(区は不要) 健康保険・厚生年金 新規適用届(5日以内) ※社長1人の会社でも加入が必要です 労働保険 保険関係成立届(10日以内) 労働保険 概算保険料申告書(50日以内) 雇用保険適用事業所設置届(10日以内) 雇用保険被保険者資格取得届(翌月10日まで) 個人事業の廃業届(廃業年分の確定申告期限まで) 青色申告の取りやめ届出書(翌年3月15日まで) 事業廃止届出書・消費税(速やかに) 給与支払事務所の廃止(廃業届の提出で原則不要) 最後の確定申告(翌年3月15日まで) 事業開始(廃止)等申告書(個人事業税) ※様式・期限は自治体により異なります 国民健康保険などの切り替え(市区町村) ※会社の社会保険に加入した後に手続き ※従業員を雇っていた場合は労働保険の精算などが必要です ※期限は原則的な取扱いです(土日祝の場合は翌開庁日など例外があります)。詳しくは本文の一覧表をご覧ください。

ポイントは、右側の「個人側」にもこれだけの手続きがあることです。それでは、順番に見ていきましょう。

【一覧表】会社側の届出|提出先・書類名・期限

まずは会社側です。新しく作った法人について、次の届出が必要です。

提出先書類名期限
税務署法人設立届出書設立の日(設立登記の日)以後2か月以内
税務署青色申告の承認申請書設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日まで
税務署給与支払事務所等の開設届出書開設の事実があった日から1か月以内
税務署源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書期限なし(申請した月の翌月に支払う給与分から適用)
都道府県・市区町村法人設立の届出(東京都は「法人設立・設置届出書」)自治体により異なる(東京都は事業開始の日から15日以内)
年金事務所健康保険・厚生年金保険 新規適用届事実発生(設立)から5日以内
労働基準監督署労働保険 保険関係成立届
(従業員を雇う場合)
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
労働基準監督署など労働保険 概算保険料申告書
(従業員を雇う場合)
保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
ハローワーク雇用保険適用事業所設置届
(従業員を雇う場合)
設置の日の翌日から起算して10日以内
ハローワーク雇用保険被保険者資格取得届
(従業員を雇う場合)
被保険者となった日の属する月の翌月10日まで

※期限が土日祝に当たる場合は翌開庁日が期限になるなど、例外があります。

会社側の届出の要点

法人設立届出書|設立から2か月以内

「会社を作りました」と税務署に知らせる届出です。提出期限は、設立の日(=設立登記の日)以後2か月以内。定款のコピーを添付して、納税地の所轄税務署に提出します(e-Taxでも提出できます)。

青色申告の承認申請書|これだけは忘れないでください

会社側の届出で最重要がこれです。提出期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「設立第1期の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日まで。ざっくり言うと、原則は設立から3か月以内、設立第1期が3か月より短い場合はさらに早くなります。

なぜ最重要かというと、出し忘れると設立1期目に青色申告の特典が使えないからです。特に大きいのが欠損金の繰越控除(=赤字を翌期以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できる仕組み)。設立初年度は赤字になりやすいのに、青色申告でなければこの赤字を繰り越せません。1期目の赤字がまるごと切り捨てになる。。。というのは本当にもったいないので、法人設立届出書と同時に出してしまいましょう。

給与支払事務所等の開設届出書|役員報酬だけでも必要です

「うちは従業員がいないから、給与関係の届出は関係ない」と思われがちですが、社長1人の会社でも、役員報酬を支払うなら提出が必要です。役員報酬も税務上は「給与」であり、会社は源泉所得税(=給与などから天引きして、会社が本人に代わって国に納める所得税)を預かる立場になるからです。期限は、開設の事実があった日から1か月以内です。

なお、役員報酬には「いくらに設定するか」という初年度ならではの論点もあります。役員報酬を低く設定した場合の注意点はこちらの記事で解説しています。

源泉所得税の納期の特例|申請して初めて適用されます

預かった源泉所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに毎月納付します。ただし、給与の支給人員が常時10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、納付を年2回(1月〜6月分は7月10日、7月〜12月分は翌年1月20日)にまとめられます。

注意点は、申請書を出して初めて適用されること。適用されるのは原則として申請した月の翌月に支払う給与分からで、それまでは毎月納付が必要です。ここは出し忘れ・勘違いが非常に多いポイントです(詳しくは後述します)。

インボイス登録|取引先から求められる場合は早めに

ここまでの税務署への届出とあわせて検討したいのが、インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録申請)です。提出が義務の書類ではありませんが、取引先が法人・個人事業主など事業者中心のビジネスでは、取引先から「インボイスを発行してほしい」と求められることが多くあります。必要な場合は、早めに登録することをおすすめします。未登録のままだと、取引先が仕入税額控除(=支払った消費税を、自社が納める消費税から差し引く仕組み)を満額受けられず、取引条件に影響することがあるためです。

一方で、登録すると消費税の申告・納税が必要になります。お客様が消費者中心の業種では、急いで登録しなくてもよい場合もあります。「自社は登録すべきか」の判断基準は、「法人成りしたらインボイス登録は必要?判断基準と2割特例終了後の選び方」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

都道府県・市区町村への法人設立の届出|東京23区は都税事務所のみ

税務署(国税)とは別に、地方税の窓口にも法人設立の届出が必要です。期限は自治体によって異なり、例えば東京都では「法人設立・設置届出書」を事業開始の日から15日以内に提出します。

なお、東京23区内の法人は、都の特例により都税事務所への提出だけでOKで、区役所への提出は不要です。23区以外では、都道府県と市区町村の両方に提出するのが基本形です(期限・様式は各自治体のホームページでご確認ください)。

健康保険・厚生年金保険の新規適用届|社長1人でも加入・5日以内

法人は、社長1人だけの会社でも健康保険・厚生年金保険への加入が法律で義務づけられています。「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を、事実発生から5日以内に事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。あわせて、加入する人の「被保険者資格取得届」、扶養家族がいる場合は「被扶養者(異動)届」も提出します。

5日以内というかなり短い期限ですが、過ぎてしまった場合も、さかのぼって加入することになります。気づいた時点で早めに手続きしましょう。

労働保険・雇用保険|従業員を雇う場合

従業員を1人でも雇うと、労働保険(=労災保険と雇用保険をまとめた呼び方)の手続きが必要になります。

  • 労働保険 保険関係成立届:保険関係が成立した日(=従業員を雇った日)の翌日から起算して10日以内に、労働基準監督署へ
  • 労働保険 概算保険料申告書:保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に、労働基準監督署・都道府県労働局など
  • 雇用保険適用事業所設置届:設置の日の翌日から起算して10日以内に、ハローワークへ
  • 雇用保険被保険者資格取得届:被保険者となった日(=雇った日)の属する月の翌月10日までに、ハローワークへ

役員だけの会社であれば、この4つは当面不要です(役員は原則として労働保険の対象外です)。


【一覧表】個人側の手続き|個人事業の締めくくりを忘れずに

ここからが、この記事の本題とも言える個人側です。法人成りをしても、個人事業が自動的に「廃業扱い」になるわけではありません。個人事業主としての自分を、きちんと届出で締めくくる必要があります。

提出先書類名期限
税務署個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)廃業した年分の確定申告期限(=翌年3月15日)まで
税務署所得税の青色申告の取りやめ届出書青色申告をやめようとする年の翌年3月15日まで
税務署事業廃止届出書(消費税)事由が生じた場合、速やかに
税務署給与支払事務所等の廃止届出書廃業届を提出すれば原則不要(本文参照)
税務署最後の確定申告(廃業年分。事業所得の集計は1月1日〜廃業日)翌年3月15日まで(原則)
都道府県税事務所事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)自治体により異なる

個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)

個人事業をやめたことを税務署に知らせる届出です。提出期限は、廃業した年分の確定申告期限(=翌年3月15日)までです。税制改正により、2026年1月1日以後の廃業については、期限が従来の「廃業から1か月以内」から確定申告期限までに延長されました。とはいえ実務上は、法人設立届出書(こちらは設立から2か月以内)とセットで早めに出してしまうのがおすすめです。

所得税の青色申告の取りやめ届出書

個人で青色申告をしていた方は、廃業届とは別に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」も必要です。期限は、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までです。

事業廃止届出書(消費税)

個人事業で消費税の課税事業者(=消費税を納める義務のある事業者)だった方は、消費税の「事業廃止届出書」も提出します。期限は「事由が生じた場合、速やかに」とされています。

また、個人でインボイス発行事業者の登録を受けていた方は、その登録をどうするかの検討も必要です。新しい法人側での登録判断とあわせて、法人成り後のインボイス登録の判断はこちらの記事で詳しく解説しています。

給与支払事務所等の廃止届出書|廃業届を出せば原則不要

個人事業で家族やスタッフに給与を支払っていた方の給与支払事務所の廃止については、個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)を提出すれば、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を別途提出する必要は原則ありません(所得税法上、廃業届がこの届出を兼ねる扱いになっています)。あわせて提出しても差し支えありません。

最後の確定申告は必要です

「法人にしたから、もう個人の確定申告は不要」ではありません。法人成りした年は、その年の1月1日から廃業日までの個人事業の所得について、最後の確定申告が必要です。期限は通常どおり、翌年3月15日まで(原則)です。

この年は、個人事業の所得(事業所得)と、法人からの役員報酬(給与所得)が1年の中に混在する、少し特殊な申告になります。ご自身で申告される場合は、集計の区切り(廃業日)を意識して資料を整理しておきましょう。

なお、個人事業税の関係で、都道府県税事務所への廃止の申告(東京都では「事業開始(廃止)等申告書」)も必要です。様式・期限は自治体によって異なります。また、会社の社会保険に加入した後は、国民健康保険の脱退などご自身の保険の切り替え手続きも市区町村で行いましょう。


よくある漏れTOP3|当事務所がよく見るパターン

第1位:給与支払事務所等の開設届出書の出し忘れ

「従業員ゼロだから給与関係の届出は不要」という思い込みが原因です。役員報酬だけでも必要、と覚えてください。

第2位:源泉所得税の納期の特例の出し忘れ

「申請書を出して初めて適用される」というルールが盲点です。適用前は毎月納付なので、申請していないのに年2回のつもりでいると、その間の納付が漏れてペナルティのリスクがあります。源泉所得税の納期の特例はこちらの記事で詳しく解説しています。

第3位:個人側の届出の放置

会社側の届出はやりきったのに、個人側が丸ごと抜けているパターンです。特に「最後の確定申告」を忘れると無申告の状態になってしまいます。法人成りの届出は「会社側と個人側の2本立て」。この記事から1つだけ持ち帰るなら、これを覚えて帰ってください。

保存版|法人成りの届出チェックリスト

最後に、法人成りで提出が必要な届出を確認用のチェックリストにまとめました。上から順に「提出済みか」を確認していけば、漏れを防げます。印刷やスクリーンショットでの保存にもどうぞ。

法人成りの届出で確認すべきこと

会社側

  • 法人設立届出書(税務署・設立から2か月以内)
  • 青色申告の承認申請書(税務署・遅くとも設立から3か月以内※第1期が3か月より短い場合はさらに早く・最優先)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(税務署・1か月以内※役員報酬だけでも必要)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署・早めに)
  • [必要な場合]適格請求書発行事業者の登録申請書(税務署※取引先が事業者中心なら登録を検討)
  • 法人設立の届出(都道府県・市区町村※東京23区は都税事務所のみ)
  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届(年金事務所・5日以内)
  • [従業員を雇う場合]労働保険 保険関係成立届(労働基準監督署・10日以内)
  • [従業員を雇う場合]労働保険 概算保険料申告書(50日以内)
  • [従業員を雇う場合]雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク・10日以内)
  • [従業員を雇う場合]雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク・翌月10日まで)

個人側

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(税務署・廃業した年分の確定申告期限=翌年3月15日まで)
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書(税務署・やめる年の翌年3月15日まで)
  • 事業廃止届出書=消費税(税務署・速やかに※課税事業者だった方)
  • 給与支払事務所等の廃止届出書(廃業届を出せば原則不要※給与を支払っていた方)
  • 最後の確定申告(翌年3月15日まで・原則)
  • 事業開始(廃止)等申告書など自治体への廃止の申告(都道府県税事務所)

「自分の場合はどれが必要で、どれが済んでいるのか。。。」と不安になった方もいるかもしれません。当事務所では、法人成りしたばかりの会社のサポートを数多く行っており、届出の漏れがないかの確認からお手伝いしています。まとめて確認したい方は、当事務所の顧問サービスのご案内もご覧ください。届出の状況確認だけのお問い合わせもお気軽にどうぞ。営業時間ベースで24時間以内に返信しています。

まとめ|届出が終わったら、次は1年間の期限管理へ

  • 法人成りの届出は「会社側」と「個人側」の2本立て
  • 会社側の最優先は青色申告の承認申請書(遅くとも設立から3か月以内。第1期が3か月より短い場合はさらに早くなります)
  • 役員報酬だけでも給与支払事務所等の開設届出書は必要
  • 個人側は廃業届・青色申告の取りやめ・消費税の事業廃止届、そして最後の確定申告まで忘れずに

届出が一通り終わったら、次にやってくるのは決算までの1年間の税務の期限管理です。

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※本記事は、公開時点(2026年8月)の法令・制度などに基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務アドバイスではありません。実際の判断や手続きにあたっては、最新の法令をご確認のうえ、税理士など専門家にご相談ください。なお、本記事の情報に基づいて生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

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